第265回:プロデューサーからスペシャル Vol.15 『ルールのお話』

 皆さんこんにちは。FFTCGプロデューサーの景山太郎です。まさに困難というべき年だった2020年も終わり、2021年が始まりました。まだまだ厳しい情勢が続きそうですが、日々少しずつでも前に進んでいけることを信じて、やれることを一生懸命やっていきたいと思います。今年もよろしくお願いします。
 というわけで、僕がやれることの一つである『プロデューサーからスペシャル』の最新回をお届けします。『Opus XII ~クリスタルの目覚め~』の発売以降は少し中断していたのですが、そろそろ頃合いではないでしょうか。
 ちなみに今回はFFTCGのルールに関しての話をしていきたいと思います。といってもFFTCGのルールを解説していくわけではありません。FFTCGにはルールに関わる要素が大きく分けて3つあります。それらがどういう役割なのかという話になります。

基本的なルール

 一般的にゲームのルールというと、そのゲームの進め方を説明したものになるかと思います。FFTCGでも単に「ルール」といえばそういったものを指すのが一般的です。つまり、最初の手札は5枚。1ターンにカードを2枚引いて、コストを払ってキャラクターや召喚獣を使用し、対戦相手に7点ダメージを与えたら勝ち。というものをもう少し丁寧に説明しているものになります。FFTCGですとスターターセットに同梱されているルールシートか、公式サイトで確認することができますが、要するにこれがあればとりあえずはゲームができるというものになります。

 まずはこのルールがないと始まりません。FFTCGの根本的な部分と言っても差し支えないでしょう。



カードのテキスト

 ルールに関する要素の2つめは「カードのテキスト」です。実はトレーディングカードゲームのルールの世界において、カードのテキストはものすごく大きな力を持っています。カードのテキストは、FFTCGのルールに従って作られているはずなのに、ときにルールを破りルールより優先されるのです。わかりやすいところですと【1-183H】コスモスや【1-184H】カオスがそれにあたります。本来フィールドに1体しか出せない光属性あるいは闇属性のキャラクターを2体以上出すことができるようになります。このようにカードのテキストは本来のルールより優先されます。
 また、最新のカードですと【12-018H】ラニはかなり大胆にルールを超越しています。「ゲームから除外した」「対戦相手のカードを」「コストを2減らし」「好きなCPで」キャストすることができる、ルールをいくつも変更しているアビリティになっています。

 このようにどんな効果でもカードに書いてさえあればゲーム内では有効で、カードに書かれていることは絶対です。逆に言うとカードに書かれていないことは、どんなにおかしくてもゲーム上では起こりません。カードのテキストは過不足なく記載されていなければならないのです。「書いてなくても常識的に考えればわかる」というアバウトな方針では作ってはいけない部分となります。
【3-130R】カイナッツォというカードがあります。このカードは一部の言語では「ターン終了時まで/Until end of the turn」という記述が抜けています。ですがフィールドアビリティ以外でパワーを増減する効果は通常ターン終了時で終わるものがほとんどなので、なんとなくターン終了時に終わる気がします。しかしもしこの部分が抜けたままの記述が正であるなら、ターンが終わっても継続されていなければならないのです(このカードに関してはすでにエラッタが出ており、効果はターン終了時に終了します)。カードテキストがルール面においてどれだけ大きな部分を占めるのかをおわかりいただけたと思います。

総合ルール

 最後の3つめは「総合ルール」になります。記述は専門的で堅苦しい書き方をしているため、ルールに詳しい人でもこれを読みこむにはそれなりの集中力を要求されます。総合ルールはFFTCGを正しく運用するための根幹となるルールです。例えば召喚獣をキャストする場合、実際のゲームではCPを支払い手札の召喚獣をブレイクゾーンに置くと思います。それが間違っているわけではありませんが、それでは召喚獣はどの段階でキャストしたとみなされるのでしょうか。CPを払った直後? ブレイクゾーンに置かれたあと? このような実際にある細かい手順、詳細が総合ルールには書いてあります。言うならば総合ルールはゲームを動かしていくためのプログラムというわけです。

 こういう細かい部分まで把握しなくてもゲームを楽しむことはできます。しかし細かい決まりごとがないとゲームが止まってしまうこともあるのです。先ほどの召喚獣の例で言うと、【12-061L】クルルを使う場合がわかりやすいのでそれで説明してみたいと思います。このカードはブレイクゾーンに置かれている召喚獣をキャストすることができます。では相手の使用した召喚獣Aに対応してクルルのアビリティを使用した場合、その召喚獣Aを使用することができるのでしょうか。もし「キャストする」という一連の流れがブレイクゾーンに置くことまで含んでいるなら、クルルのアビリティを使用するときにはすでに召喚獣Aはブレイクゾーンにあるので、それをキャストすることができそうです。
 しかし総合ルールによると、召喚獣は解決されるまでブレイクゾーンに行かずスタックにとどまっていると定義されています(総合ルール11.3.2参照)。ということは召喚獣Aに対応してクルルのアビリティを使用する場合、召喚獣Aはまだスタック上にありブレイクゾーンにはないため使えない、ということになるのです。

 このように、総合ルールは見えない部分の動きも定義し、ゲームの進行や解決に問題が起こらないようにするという、ゲームの根幹を担っているルールとなります。
 総合ルールの読み込みは、最初に言ったようにルールに詳しい人でもそれなりの労力を必要とします。しかし難しいなりに読み進めていくと新たな発見などもありますし、ルールの理解力も深まっていきますので、機会があったら一度見てみるのも悪くないと思います。

 2021年の初回からちょっと長くなりましたので、今回はこのへんにします。それではまた次回にお会いしましょう!